~2021年中小企業白書を読み解く~経済産業庁
本記事では、中小企業白書の中からM&Aや事業承継に関係する内容を読み説きまとめていきます。
2021年中小企業白書の概要
テーマ:「危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ。」
:新型コロナウイルス感染症が中小企業・小季語事業者に与えた影響をきめ細かく分析し、その実態を明らかにするとともに、危機を乗り越えるために重要な取組や経営者の参考になるデータや事例を豊富に紹介。
事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用
感染症の影響や経営者の高齢化により、廃業のリスクも高まる中で、技術や人材を引き継いでいくために重要となる事業承継などの進展状況や、M&Aを活用した規模拡大・新事業展開の取組事例について調査・分析。
第1章
経営者の高齢化と感染症の影響で2020年の廃業件数は4万9698件で過去最多!
とはいえ、2016年以降毎年4万件以上の企業が廃業しているためいずれも高水準である。
上記の図1を見て分かる通り、経営者の平均年齢と廃業数が比例しているのは
後継者不足や経営者不足が潜在的な原因として挙げられる。
2020年の経営者平均年齢は62歳を超えた。
経営者が高齢になってくると”30年ビジョン”が立てられなくなったり、ヒト・モノ・カネの投資がし辛くなるため今回のような外的要因で廃業のきっかけになってしまう。
図2の売上高当期純利益率を見ると
廃業・休業をした企業の約60%が黒字だったことが分かる。
図3の現経営者が事業承継後5年以内に実施した取組では
- 新たな販路の開拓
- 経営理念の再構築
- 経営を補佐する人材の育成
のランキングとなっている。
これを見ても読み解ける通り事業承継後、計画に沿った新たな投資をし、経営体制の見直しをする経営者が多い。
つまり
廃業数が過去最高を更新したが、その大半は黒字廃業である。その要因は経営者の高齢化による経営計画の衰退・企業MVVの衰退であるため、優れた経営者への事業承継などが求められている。
第2章
図1を見ると、10年前はM&Aの成約件数はほとんどない。それどころか相談件数すらない状況だったことが分かる。
⇩その理由として当時はM&Aの情報が少なく、支援機関もない状況であり
M&Aを実行するにも仲介するにも莫大なお金と労力が必要だったことが挙げられる。
現在はM&Aに対してプラスのイメージを持つ人が増えてきており、それが相談件数や成約件数の数字に表れている。
要因としてインターネット普及による情報革命もあるが大きいのはプラットフォームの登場や支援機関の普及・行政からの支援が挙げられる。
※バトンズが登場したのも2018年
図2のM&Aを検討したきっかけや目的がこちら。
買い手の目的ランキング
- 売上・市場シェアの拡大
- 新事業展開・異業種への参入
- 人材の獲得
売り手の目的ランキング
- 従業員の雇用の維持
- 事業の成長・発展
- 後継者不在
買い手は自社の拡大や成長戦略の手段として
売り手は会社・関わる人を守る目的としてM&Aが選択されていることが分かる。
売り手の目的で興味深いのは、第1章の「経営者の高齢化」がこのランキングにも表れているということ。
図3を見る限りM&A後の従業員雇用は大半が継続である。
それは売り手の一番のニーズともマッチしており、M&Aは今後も重要視されることが予想できる。
つまり
M&A・事業承継のニーズは拡大しており、支援機関の普及によるM&Aの難易度が下がってきているため今後さらにM&A・事業承継を求める企業が増えていくということである。
まとめ
M&A・事業承継の市場にはこれから追い風が吹くが、経営者の高齢化が進み続けるため、時間的課題が残る。平均引退年齢と言われている70歳に到達する7年後までに事業承継を普及させる必要性がある。